九州初開催の「バンドネオン・シネマ」 ドラマティックな映画音楽のクリスマスプレゼントを―
タンゴのナンバーにとどまらず、クラシックからロックまで数々のプロジェクトに挑戦しているバンドネオン奏者の三浦一馬さん。実は大分と縁の深い彼に、公演に先立ちメッセージをいただきました。
文:冨松 智陽
大分で掴んだチャンス
‒ 大分県には何度も来てくださっていますが、印象深いエピソードはありますか?
大分では何かと嬉しいご縁がありまして、中でも師匠のネストル・マルコーニさんと出会った別府アルゲリッチ音楽祭は、キャリアの転機になりました。小学生の頃にバンドネオンを始めて以来、色々な録音でマルコーニさんの演奏を聴きましたが、ひとりで弾いているとは思えない超絶的なソロもあれば豊かに歌いまわすメロディーもあり、それはもうクールで!ぜひ会ってみたい、願わくば弟子入りしたいとずっと思っていた憧れの方が来日されると聞き、2006年の音楽祭の全公演を聴きに行ったんです。
実際はあらゆるところに警備員さんが立っていて、とても楽屋に潜り込む余地はなく(笑)。ところが色んな会場をまわっているうちに、音楽祭のスタッフの方が顔を覚えてくださって。ありがたいことに最終日、打ち上げをしていた別府のお寿司屋さんに呼んでいただき、そこで初めてマルコーニさんに会うことができました。
‒ その5年後には、iichikoグランシアタでアルゲリッチさんとも共演されましたね。
本来はマルコーニさんの公開マスタークラスなどに出演予定でしたが、東日本大震災の影響で師匠が来日できなくなり、代役を務めることに。急遽アルゲリッチさんとデュオも演奏させていただけたことは、自分の音楽人生を振り返ってみても素晴らしい時間でした。
往年の名曲を新たな感覚で
‒ 以来、とても表現の幅を広げていらっしゃいますね。
それは良かったことも残念だったことも、全部含めて“続けてきたことの賜物”としか言いようがないです。演奏会が始まる瞬間、「あの悔しさを挽回したい」と誓うこともあれば「今日も幸せな時間になるように」と願うこともあります。皆さんと同じくひとりの人間として生き、経験した全てのことが演奏に繋がっていると思います。
様々なプロジェクトに取り組んできたのは、自分自身の好奇心もありますが、“バンドネオン=タンゴ”という方程式に疑問を感じたから。クラシックもジャズも、試してみたくて。
‒ 「バンドネオン・シネマ」のシリーズは、どんなきっかけで生まれたのですか?
これは10年以上前に「もっと気軽に楽しんでもらえる企画はないか?」という思いから始まったシリーズで、少しずつ内容をアップデートさせてきました。10月末にはライブ録音CDも発売予定です。大分で演奏するのは、今までのベスト盤のようなプログラム。往年の名曲ですが、バンドネオンという楽器で奏でる新しさを感じてもらえるはずです。関連して映画上映会も開催していただけるとのこと。映画を観なくても楽しめますが、せっかくだから上映会にも来ていただくとより楽しめると思いますし、楽しみ方は何通りあってもいいと思います。
‒ 共演者の方々の魅力は?
普段から色々なプロジェクトで共演していて、心から信頼している愛すべき皆さんです。ある演劇関係の方が「劇団は同じメンバーで構成されているけれど、役によって関係性が変わっていくのが面白い」と言っていましたが、私たちも今回のコンサートではどんな関係性を見出せるのか楽しみです。
‒ 最後に、メッセージをお願いします。
いつも応援いただきありがとうございます。今回は音響も素晴らしいiichiko音の泉ホールで、九州で初めての「バンドネオン・シネマ」を聴いていただけることを嬉しく思います。ぜひ、会場でお会いしましょう!
information
(全席指定)
- 未就学児入場不可
(公財)大分県芸術文化スポーツ振興財団(097-533-4004)
関連イベント 名作上映会[入場無料][各回先着300名]
この記事は「びびNAVI vol.112」で掲載された記事です。
五感の翼が広がる総合ガイド誌「びびNAVI」は、iichiko総合文化センター及び大分県立美術館の館内ほか、県内や隣県の公立文化施設などで配布中。