Special Interview(後編)「金曜ロードショーとジブリ展」鑑賞ガイド
金曜ロードショーの歩みとスタジオジブリの歴史や逸話、 そしてジブリ作品の名場面を辿りながら、
映画の魅力を再発見できる本展。 開催が近づく中、大分展の内容が少しずつ明らかになってきました!
そこに込められた思いとは?
前号に続いて、 金曜ロードショーとジブリ展プロデューサー 依田謙一さんにインタビューしました。
金曜ロードショーとジブリ展
プロデューサー
依田 謙一 さん
大分ならではの楽しみも
ー運命的に、同じ年に誕生した金曜ロードショーとスタジオジブリの展覧会。注目すべきポイントを教えてください。
まずは、それぞれの歴史を辿りながら時代と世相を振り返ってもらいます。これを見ると、どのジブリ作品も生まれた時代と密接に関わっていることがわかって面白いんです。例えば『魔女の宅急便』(1989年)。当時、宮﨑駿さんの周りには地方から都会に出てきて自分の道を切り拓こうとしている若者がたくさんいました。漫画を描きながらアルバイトもして、夢を追いかけるけど簡単にはいかなくて…そんな中『魔女の宅急便』という児童文学に出会った宮﨑さんは、「これは今の若者たちの話だ」と感じて作品化したそうです。普遍的なテーマを扱っている映画が多いのですが、実は時代背景とも関係があることを発見していただけると思います。
ー映画の世界観に没入できるコーナーもあるそうですね。
はい。投影された作品の一場面やキャラクターを音楽とともに楽しんでいただける「ジブリの幻燈楼」が好評です。巨大な投影機は、富山のガラス職人さんたちにつくっていただきました。造形作家の竹谷隆之さんが手がけた「風の谷のナウシカ 王蟲の世界」でも没入感に浸れると思いますし、ジブリ作品のポスターの主人公になれるコーナーもあります。
ー大分展ならではの楽しみ方はありますか?
最初に歴史を辿るコーナーがあると言いましたが、ここで大分の歴史も一緒に振り返っています。また、視察に伺った時、会場となる大分県立美術館が素敵だったので、大きな窓を借景にしたり…空間を上手く活かしたいなと考えているところです。
スタジオジブリ作品のポスターの主人公気分を楽しめるフォト空間。
変わる時代と変わらぬ思い
ー依田さんにとって金曜ロードショー、そしてジブリ作品とはどんな存在ですか?
まさしく金曜ロードショー=ジブリというイメージ。出身地が映画館の多い地域ではなかったので、金曜ロードショーをよく見ていましたし、そこで出会ったジブリ作品に心を掴まれ、放送されるたびにビデオテープに録画して繰り返し見ていました。多くの家庭で同じ光景があったのではないでしょうか?
ちなみに、好きな作品は毎日違います! 仕事が上手くいかないと『魔女の宅急便』を、現実逃避をしたいと『千と千尋の神隠し』を見たくなりますし、『紅の豚』は大人になればなるほど好きになってきました。
名場面が、光と音に包まれて浮かび上がる「ジブリの幻燈楼」。
金曜の夜、SNSをにぎわせた“あのシーン”を集めた絵コンテコーナー。
“腐海”を表現した「風の谷のナウシカ 王蟲の世界」
ーテレビで放映される映画番組が減っても金曜ロードショーは現役で、動画配信の潮流がきてもジブリ作品はテレビでの放映を続けています。今回の展覧会のテーマでもあると思いますが、昭和・平成・令和と時代が移り変わっても、変わらない思いとは?
展覧会のテーマの一つに、「展示を見ながら会話をしてほしい」という思いがあります。静かに鑑賞しなければならない美術展と違って、おしゃべりをしながら見てもらいたい「会話型」の展覧会だと考えています。その思いをいちばん込めたのが、絵コンテのコーナー。ここでどんなシーンを選んだかというと、金曜ロードショーでジブリ作品を放映中に、SNSで話題になったシーンからセレクトしているんです。つまり、展示されているのはみんなが語りたくなるシーンで、それは名場面でもあるわけですが。テレビで映画を見る面白さは、日本各地で多くの人が同じ時間帯に同じものを見ること。そのお祭り感の中、家族で一緒に見るだけにとどまらず、近年はSNS上でもコミュニケーションが生まれています。ですから、展覧会でもぜひ会話を楽しんでほしいんです。
そして帰り道、「映画を見たいな」という気分になってもらえたら、本当に嬉しい。僕たちの願いは、それ一つです。
文:冨松 智陽
ーおわりー
information
10:00~19:00
- 金・土曜は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
この記事は「びびNAVI vol.112」で掲載された記事です。
五感の翼が広がる総合ガイド誌「びびNAVI」は、iichiko総合文化センター及び大分県立美術館の館内ほか、県内や隣県の公立文化施設などで配布中。