OPAM
2026.03.03

Interview 旅路を追い見えてきた、新たなカイ・フランク像

Kaj Franck 暮らしに寄り添うデザイン

 カイ・フランクという名前にピンとこなくても、「アラビア」や「イッタラ」なら北欧ブランドの代名詞として誰もが知っているはず。何なら食器やグラスの一つお持ちの方も多いのでは?
 もし食器棚に並んでいるのが「ティーマ」や「カルティオ」なら、その原型をデザインした人物こそ、カイ・フランクなのです。
 「フィンランドデザインの良心」と呼ばれるカイ・フランクは、人々の暮らしに寄り添った画期的な食器を生み出し、陶器・ガラス製品にカトラリーまで、世界中に愛されるプロダクトをデザインし続けました。そんな彼、個人にテーマを絞った貴重な展覧会が、まもなく始まります。
 本展では、カイ・フランクの生涯を幼少期から追い、その人物像を探求するとともに、数々のプロダクトや壮年期に手がけたアートピースも展示。後世に与えた影響までを俯瞰します。さらに今回、知られざる日本との関わりを紐解き、新事実も初公開!
 実はOPAMで北欧デザインの展覧会が開催されるのは初めてのこと。しかも大分は、今回全国を巡回する本展の最初の開催地!真っ先にカイ・フランクの世界観に浸れる幸運な機会を、ぜひお見逃しなく。

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Photo:Rauno Träskelin
Kilta
《キルタ(ギルド)》シリーズ 1953年 アラビア製陶所
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Photo:Rauno Träskelin
Serving Plate
《KF1》サービングプレート 1957年 アラビア製陶所
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Photo:Rauno Träskelin
Plate
プレート 1979年 ヌータヤルヴィ・ガラス製作所
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Photo:Rauno Träskelin
Goblet
《KF486》ゴブレット 1969年 ヌータヤルヴィ・ガラス製作所

interview「旅路を追い見えてきた、新たなカイ・フランク像」

本展では、カイ・フランク来日時の知られざる足跡が初めて公開されます。
展示後半の「カイ・フランクが見た日本」の章を監修する立花昭さんに、その見どころをお聞きしました。

文:冨松 智陽

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岐阜県現代陶芸美術館
学芸員
立花 昭 さん

‒ カイ・フランクのプロダクトの優れた点は、どこに表れていますか?

 

 森と湖、サンタやムーミン・・・フィンランドというと、およそ良いイメージしか浮かびませんよね?しかし、カイ・フランクが活躍し始めた頃のフィンランドは、第二次世界大戦の敗戦国として非常に貧しい国でした。そんな中、シンプルで温かみのある北欧デザインが生まれ、世界中の視線を集めていきます。特にカイ・フランクのデザインが優れていたのは、使う人たちの生活と向き合い、機能を重んじた点です。
 というのも、歴史的に見ると西洋の食器のスタンダードは王侯貴族が使う銀食器でした。その後、ドイツのマイセンで磁器がつくられ量産できる時代になっても、ディナープレートやスープ皿、パン用の小皿など大小さまざまなサイズをひと揃いにする伝統は脈々と続き・・・それを変えたのが、カイ・フランク。どんな用途にも使える汎用性があり、唯一の装飾は色というくらいシンプルで、重ねて省スペースを叶えられる上に安価な彼の食器は戦後、狭い家で貧しく暮らす人々の手にも届くものでした。そんな彼の業績を”キッチン革命”と呼ぶ人もいます。

 

‒ 時代を経てなお愛されているのは、どうしてだと思いますか? 

 

 いろいろな理由が考えられますが・・・例えば、彼がデザインした「キルタ」というシリーズは今も「ティーマ」という名前で販売されています。マイナーチェンジを繰り返していることが時代のニーズに合っているのかもしれませんし、あるいは私たちの食空間が激変しない限り、第2のキッチン革命は起きないのかもしれません。

足跡は「小鹿田」にも

‒ 立花先生が監修された「カイ・フランクが見た日本」というテーマは、今回の大きな見どころですね。

 

 カイ・フランクは三度来日しています。そのうち最もインパクトを受けたであろう1回目の詳細が分かっていなかったのですが、今回、フィンランドから提供された資料を整理したところ、彼自身のメモから足跡が明らかになったんです。東北から兵庫県あたりまでを旅し、驚いたことに伊豆大島にも渡っていました。また、印象深かったこととして山形の鋳物が挙げられており、後に訪れる備前の焼き物とも関連する土瓶・鉄瓶を参考に、ケトルなどのデザインをしています。

 

‒ 大分県にも来ていますか? 

 

 2回目の来日時に訪れていますよ。大阪港から別府に至り、おそらく耶馬渓を観光しながら小鹿田に滞在したようです。
 カイ・フランクは、その土地の風土や生活に根ざした視点を大切にしていました。実際、日本でカイ・フランクが撮った写真にも各地の原風景や伝統的・民俗的な物事が収められているため、従来は「田舎の暮らしばかりに関心があった」といわれてきました。ところが今回、東京で最新の建造物を撮った写真も発見されたことから、彼はただありのままのまちの姿を見つめ、そこからデザインを生み出していたのかもしれません。

 

‒ もし、この世にカイ・フランクがいなかったら、どうなっていたでしょう? 

 

 「キルタ」が生まれなかったら物足りなかっただろうと思う一方、カイ・フランク以外にも優れた北欧デザイナーはたくさん輩出されていますので、誰かがその世界観を実現したかもしれません。
 カイ・フランクの全貌が分かる今回の展覧会。あっと驚く展示もあり、それを最初に見ることができるのは大分の皆さんの特権です。私の講演会でもいろんなエピソードをお話ししますので、お楽しみに。

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Photo:Rauno Träskelin
Ink Bottle
インクボトル 1959年 ヌータヤルヴィ・ガラス製作所
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Photo:Pietinen
アラビア製陶所でのカイ・フランク 1953年

会場限定販売 | カイ・フランク展 記念アイテム

「必要な装飾は色だけ」ー カイ・フランク

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撮影:山本倫子
【数量限定】ティーマ マグ 0.3L 
各 3,960円(税込)
数量限定

キルタの人気カラーからインスパイアされたヴィンテージブルーと、ナチュラルで落ち着いたリネンの2色。

information

会期
2026年4月25日(土)~6月14日(日)
会場
大分県立美術館 1F 展示室A
時間
10:00~19:00
  • 金曜日・土曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
主催
公益財団法人大分県芸術文化スポーツ振興財団・大分県立美術館、ヘルシンキ建築&デザイン・ミュージアム、朝日新聞社
共催
TOSテレビ大分、大分合同新聞社
協賛
NISSHA
特別協力
IITTALA
後援
フィンランド大使館、大分県、大分県教育委員会、NPO 法人大分県芸振、西日本新聞社、毎日新聞社、NHK大分放送局、エフエム大分、NOAS FM
お問合せ
大分県立美術館(097-533-4500)

この記事は「びびNAVI vol.114」で掲載された記事です。
五感の翼が広がる総合ガイド誌「びびNAVI」は、iichiko総合文化センター及び大分県立美術館の館内ほか、県内や隣県の公立文化施設などで配布中。

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