子どもも大人も楽しめる “おどる絵本”を観にいこう!
子どもも大人も楽しめる “おどる絵本”を観にいこう!
2024年に初演された話題の舞台が、大分に。
人気作家・ヨシタケシンスケさんの絵本が、ダンス×演劇になってやってきます!
さまざまな「違い」に優しい眼差しが注がれた原作をもとに、誰もが楽しめる
ステージをつくり上げたスズキ拓朗さんに、公演に込めた思いをお伺いしました。
振付家・演出家・ダンサー。ダンスカンパニーCHAiroiPLIN主宰、コンドルズ所属。舞台作品の振付・演出のほか、NHK Eテレ「みいつけた!」など幅広く活躍。第75回芸術選奨舞踊部門文部科学大臣新人賞はじめ受賞歴多数。奇抜なファッションとチャップリンを好む。
ー どうしてヨシタケシンスケさんの『みえるとか みえないとか』を原作に選んだんですか?
ヨシタケシンスケさんは僕自身が好きな作家で、中でも『みえるとか みえないとか』はまずタイトルが気になりましたし、大人が失ってしまったものへの問いや障がいも絡んだ深い話でありながら、その問題提起がすごく可愛らしく描かれています。誰もが楽しめる内容だと思いましたし、僕が宇宙人を好きだったりもして、とにかくこの作品に惹かれました。
ー 絵本からダンスをつくっていく難しさ、面白さとは?
ヨシタケさんの絵はいい意味でユルくて、あまりアクティブではありません。その優しい雰囲気を壊さないようにしながら振り付けをする必要があり、キャスティングや衣裳も含めて難しかったです。そんな中、目が3つある宇宙人を表現するにあたり、手に目を書いて、瞬きのように動かすことを思いついたときにはすごくワクワクしました。
ー 原作ではいろいろな個性の違いについて触れていますが、ご自身が周りと違うと感じた経験はありますか?
高校時代にバスケットをしていたのですが、ある日、手の握力がなくなりいちばん得意だったドリブルが急にできなくなって。バスケ自体を続けられなくなりました。その僕が、今はダンスを踊っています。できない動きもあるんですが、あえてできない動きをしてみることで、ほかの人との違いを出せるんじゃないかと、プラスに捉えるようになった時期もありました。いろんな悩みを抱えている人が、マイナスの部分をプラスだと思ってくれたらいいなと願いながら、いつも舞台に立っています。
違いを発見する楽しさ
ー 初演から2年。再演を控えた今の心境をお聞かせください。
初演のときは素直に「子どもたちに楽しんでもらいたい」「家族で見に来てもらいたい」という気持ちでした。再演が決まってからは、観劇してもらうことはもちろん、それ以上に「見えないものを見ようとする力」を感じていただきたいという思いが強くなり、僕ももう一度、世の中のいろんな人を理解することの楽しさを深く掘り下げているところです。
ー 初演からパワーアップする部分はありますか?
「彩の国さいたま芸術劇場」での初演では、非常階段や奥行きのあるシャッターなど劇場の設備をフルに使った演出を行いましたが、今回は全国各地の会場にお伺いするので、どの開催地でも楽しんでいただける演出に変更します。例えば、冒頭にバリ島の音楽“ケチャ”を思わせるシーンがあるのですが、初演では舞台奥から人が次々に登場する演出でした。今回は各会場の空間に合わせ、動きが複雑に重なり合う構成を考えています。どうぞ楽しみにしていてください!
僕の人生で、こんなに多くの会場で作品を上演できるのは初めてのこと。本気度でいうと奮い立つほどやる気満々…いつも本気なんですけど!ひとつのターニングポイントだと思っています。普段は東京を拠点としていますが、地方には東京との違いがたくさんあり、刺激を受けられるので、後悔しないよう精一杯作品をブラッシュアップします。
ー 舞台を通じて、どんなことを届けたいですか?
僕は、小さな頃から互いの違いを発見する楽しさを身につけていけるような場所が、当たり前に、しかもたくさんあるといいなと思っています。そうすれば子どもたちは、抵抗なくいろんな人に興味が持てるのではないでしょうか。そういう教育が舞台でできたらと。そもそも違いがあるのは怖いことでもありますが、大人のほうが臆病で、子どもたちはあまり気にせずに違いを飛び越えられるもの。今回の作品でも、子どもたちには「あの人の動き面白いね」「あの衣裳着てみたいな」…と、純粋に違いを楽しんでもらいたいですね。きっと子どもたちは「なんで?」「どういうこと?」とたくさん疑問を持ち、大人に質問すると思いますが、たぶん大人は答えられないんですよ(笑)。いい意味で課題になると思うので、間違ってもいいから何かを答えてみてほしい。子どもとの対話やコミュニケーションのきっかけにしてもらえたら嬉しいです。
親子で一緒に劇場へ
ー 大分のイメージをオノマトペで表現するなら?
え?!どうだろう…僕、漢字を視覚的な文字情報で捉えるところがあって、「大分」を「おおいた」と読めなかった気がするんです。「おおふん」と思っていたかな?だから、
オウ、オゥ!ダイッ、ブンブン?!おっきいの?「ブンブン♪」なの?「フンフン♪」なの?
みたいな感じでしょうか(笑)。
ー 思わず踊り出したくなるような回答をありがとうございます(笑)。では最後に、子どもの頃から本物の芸術に触れることの大切さを、どうお考えか聞かせてください。
これは持論ですが、視覚情報や想像力をかきたてて感性を養うことはもちろん、それ以上に大事なのは子どもが大人の姿勢を肌で感じることだと思うんです。一緒に時間をかけて劇場に行き、座席に座って観て、そこで黙っているのか反応するのか。家のテレビで一緒に見ることもできますが、それは日常で、外に出て起きる非日常なことに対して、自然と子どもも対応していくものだと思います。だからといって大人が緊張して教育する必要はなくて、ただ、起きたことに対して反応すれば良い。〝言葉にできない小さなことの積み重ね〟を大事にしたいですね。
文:冨松 智陽
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こども(小学生以下)1,000円
予告 来春開催!
この記事は「びびNAVI vol.115」で掲載された記事です。
五感の翼が広がる総合ガイド誌「びびNAVI」は、iichiko総合文化センター及び大分県立美術館の館内ほか、県内や隣県の公立文化施設などで配布中。