OPAM
2025.06.19

おおいたの画家をキーパーソンに、“リンク”をたどる 「OPAM会館10周年記念 LINKS-大分と、世界と。」

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大分県立美術館10周年アニバーサリーに、特別な展覧会を開催します。その内容は?なぜこのような企画となったのか?!約2年をかけて準備に奔走してきた学芸員たちの思いも込めて、その見どころをお伝えします。

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©2025 Succession Pablo Picasso BCF(JAPAN)
パブロ・ピカソ《鴨型花器・女性の頭部》
A.R.117 1951年 ヨックモックミュージアム

ピカソに会いにいこう!
ピカソは第二次対戦後、陶芸に夢中になりたくさんの作品を残している。今回はその中から7点を展示。絵画に負けない個性を五感で感じて!

©2025 Succession Pablo Picasso BCF(JAPAN)
パブロ・ピカソ《ゲルニカ・(タピスリ)》
パブロ・ピカソ(原画)ジャクリーヌ・ド・ラ・ボーム=デュルバック(織)1983年(原画1937年)群馬県近代美術館
後期5/23〜6/22のみ展示

スペイン内戦で無差別爆撃を受けた町「ゲルニカ」をテーマに、戦争の悲惨さを伝える名作。原作はニューヨーク近代美術館に預けられ、織師とともに3点だけタピスリがつくられた。
そのうちの1点が今回展示される。

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藤雅三《フランス風景》
1887年頃東京国立博物館

”日本近代洋画の父”と呼ばれる黒田清輝を絵の世界に導いたのは、臼杵出身の藤雅三だった。フランスで出会った2人の”リンク”を紹介しつつ、日本に1点しかない藤の油彩画をご紹介。

 2015年春、大分県立美術館(OPAM)は、開館記念展「モダン百花繚乱」で華やかにその幕を開けました。同展では、古くから世界と積極的に関わってきた大分の風土や文化を背景に、郷土で育まれた作家たちの作品と世界的名品の出会いを演出。以来、「出会いと五感のミュージアム」というコンセプトを大切に、数々の展覧会を開催してきました。

 そんなOPAMがこの春、10歳の誕生日を迎えました。その最初の企画展としてお届けするには何がふさわしいのか。初心を大切に、あらためて「出会い」という言葉を丁寧に紐解き、たどり着いたのが「LINKS-大分と、世界と。」と題した企画展です。開館記念展に迫る、約180点の作品をご紹介します。

日本画界の頂点を築いた、三人の『山』

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杉山寧《弯》
1964年東京国立近代美術館
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東山魁夷《冬華》
1964年東京国立近代美術館
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髙山辰雄《弯》
1964年東京国立近代美術館
4/26~5/21のみ展示

3人は永遠のライバル関係!?

第2部では、日本画の最高峰、「日展三山」と呼ばれた杉山寧、東山魁夷、 髙山辰雄の3点を並べて展示。髙山とライバル2人の“リンク”とは?!

大物アーティストと芸術的な交流?!
佐藤 敬 × パブロ・ピカソ

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佐藤敬《水災に就いて》
1939年大分市美術館

日本にも戦争の足音が近づいてきた頃、佐藤敬がピカソの《ゲルニカ》に刺激を受けて描いたとされる作品。佐藤はその後、時代に翻弄されて従軍画家を経験している。

まだ海外への渡航が簡単ではなかった1952年頃、佐藤敬はピカソに会いに行き、交流したという。

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©2025 Succession Pablo Picasso BCF (JAPAN)

芸術との出会いを

 

 「LINKS-大分と、世界と。」は、第1部(1階)で洋画を、第2部(3階)で日本画をお楽しみいただく構成で、どちらも大分県出身の画家をキーパーソンに、世界との“LINKS(つながり)”をたどっていきます。

 例えば、第1部の主人公になるのは、モダンアートを生きた大分市出身の洋画家・佐藤敬。ピカソから大いに影響を受けた彼は、それまでの作風から一転、日本にも戦禍が迫る中で『ゲルニカ』を彷彿とさせる作品を制作します。そして戦後、憧れのピカソに会いに行くと、この出会いをきっかけに自らの個性を見出し、次第に作風が純粋抽象へと変化していくのです。展示ではピカソの影響、そして戦前戦後の作風の移り変わりをご覧いただけるほか、5月23日からは《ゲルニカ(タピリス)》が登場。ピカソが自ら監修し、職人に織らせたというタペストリーは、世界にわずか3点しかない必見の作品です。

 また、作家同士の“リンク”にも注目。かつて大分市に存在したキムラヤ画材店で、若き日の吉村益信、磯崎新らが結成した「新世紀群」という絵画グループについて、どんな活動をし、どのようにしてネオ・ダダの源流となっていったのかを貴重な新発見資料を通してご紹介していきます。彼らが若草公園(大分市)で開催した絵画展を、福田平八郎が観にきたという逸話も・・・。

 このように、大分の作家をベースにしながら、美術史と切っても切り離せない世界の歴史や社会情勢にまで“リンク”する見どころたっぷりの展覧会。何度も足を運んで、どうぞ心ゆくまでご観覧ください。そこに皆さんと、心動かされる芸術との素敵な出会いがあることを願っています。

information

会期
2025年4月26日(土)~6月22日(日)
  • 2025年5月22日(木)は休展日
会場
大分県立美術館 1階 展示室A 3階 コレクション展示室
時間
10:00~19:00
  • 金曜日・土曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
観覧料
・一般 1,400(1,200)円
・大学・高校生 1,200(1,000)円
  • ( )内は前売および有料入場20名以上の団体料金。
    中学生以下は無料。
    大分県芸術文化友の会 びびKOTOBUKI無料(同伴者1名半額)、TAKASAGO無料、UME団体料金。
    身体障がい者手帳・療育手帳・精神障がい者保健福祉手帳をご提示の方とその付添者(1名)は無料。
    学生の方は入場の際、学生証をご提示ください。
お問合せ
大分県立美術館(097-533-4500)

この記事は「びびNAVI vol.109」で掲載された記事です。
五感の翼が広がる総合ガイド誌「びびNAVI」は、iichiko総合文化センター及び大分県立美術館の館内ほか、県内や隣県の公立文化施設などで配布中。

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