誰もが息を呑む、圧巻の舞台美 東京バレエ団 『眠れる森の美女』団長・斎藤 友佳理さんにインタビュー
団長・斎藤 友佳理が語る『眠れる森の美女』 幻想的な世界が織りなす 美しい感動が大分へ


神奈川県横浜市出身。6歳から母のもとでバレエを始め、ロシアへの短期留学を繰り返す。M.セミョーノワやE.マクシーモワに師事。1987年、東京バレエ団入団。詩情あふれる典雅な踊りとドラマティックな表現力でたちまち大輪の花を咲かせる。2015年8月に同団の芸術監督に。2024年、団長に就任。
東京バレエ団が魅せる 新たな『眠れる森の美女』の物語
ー『眠れる森の美女』はチャイコフスキー作曲、プティパ振付により1890年に初演された古典バレエの最高峰です。2023年に新演出・振付された際にこだわった点はどこですか?
斎藤 クラシック・バレエならではの“薫り”を大切にしながら、現代のお客様がご覧になっても見飽きないようにしました。初演当時はなんと4時間半くらいかかったそうです。そこで、楽譜を見直して短くできる箇所を省き、休憩2回を入れて約3時間にまとめました。振付についても、ロシアの※帝室劇場の時代を知る故マリーナ・セミョーノワ先生たちの教えを受け継ぎつつ、今の時代に合うようにアップデートしています。「古典の枠組みから外れることはなく、その上で新しくする」というバランスをとるのが難しかったですね。
リラの精が導く運命の出会い
ー新演出のオリジナリティはどこにあるとお考えですか?
斎藤 善の妖精リラの精が、物語の進行役以上の役割を果たします。オーロラ姫は、悪の精カラボスに死を予言されますが、リラの精は「長い眠りにつくだけで、いつか現れる王子の口づけによって目を覚ますでしょう」と呪いを和らげます。そして、“洗礼の母”であるリラの精がオーロラ姫にふさわしいデジレ王子を探し出し、二人を出会わせます。オーロラ姫は100年の眠りについたのではなく、デジレ王子と出会うために100年かかったと私はとらえています。
幻想の世界に誘う パノラマの魔法
ー東京公演と同様のクオリティで上演されるそうですね。苦労された点はどこですか?
斎藤 デジレ王子はオーロラ姫のもとへと向かうために舟に乗り川を進みます。初演時、そこにパノラマと呼ばれる背景画が動く演出がありました。大がかりなこともあって、今ではほとんど行われていませんが、デジレ王子がオーロラ姫が眠る“異なる次元”へと赴くことを伝えるには必要なのです。それを大分公演でもお見せします。
ー主演キャストの魅力、配役の狙いについてお話しください。
斎藤 オーロラ姫の秋山瑛は、前回2023年に踊ったときも素晴らしかったので信頼しています。デジレ王子の大塚卓は今回初めて踊りますが、次に踊るなら彼だろうなと思っていました。役にぴったりです。秋山が大塚を導いてくれるでしょう。
目には見えない力で結びつく 舞台の魅力
ー今回の舞台をより楽しむために、ひと言いただけますか。
斎藤 バレエは総合芸術です。音楽、美術、衣裳、照明、どれか一つ欠けても成り立ちません。今回のようにオーケストラも加わると、約200人もの人々が関わっています。劇場芸術の醍醐味は一期一会。お客様と演じる側との間に、目には見えない化学反応が起こります。それは一度限りで、二度と戻ってこない瞬間です。その時間を大切にしたいと思います。
ー大分の観客に向けて、メッセージをお願いします。
斎藤 公演のために何度も大分を訪れていますが、良い思い出しかありません。iichikoグランシアタは大好きな劇場です。私は父方から九州の血を引いていることもあり、九州に来ると心が落ち着きます。大分に『眠れる森の美女』を持って戻ってこられるのはうれしいですね。皆様、ぜひお越しください。
※現在の『マリインスキー劇場』
文:高橋 森彦
♦指揮/井田勝大
♦演奏/九州交響楽団
♦音楽/ピョートル・チャイコフスキー
♦台本/イワン・フセヴォロシスキー、マリウス・プティパ(シャルル・ペローの童話に基づく)
♦原振付/マリウス・プティパ
♦新演出・振付/斎藤友佳理
♦ステージング&プロダクション・コンセプト/ニコライ・フョードロフ
♦舞台美術/エレーナ・キンクルスカヤ
♦衣裳デザイン/ユーリア・ベルリャーエワ
cast

オーロラ姫 秋山 瑛

デジレ王子 大塚 卓
information
- 5歳以上入場可
- U25割の取扱いはiichiko総合文化センターのみ
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この記事は「びびNAVI vol.109」で掲載された記事です。
五感の翼が広がる総合ガイド誌「びびNAVI」は、iichiko総合文化センター及び大分県立美術館の館内ほか、県内や隣県の公立文化施設などで配布中。
