センター
2025.10.27

オーケストラの響きを、2人で奏でる 物語を“聴く”演奏会

112_p2_01

麻里さんが6歳、桃さんが1歳の時に渡欧し、ピアノデュオとしてのデビューコンサートはパリにて、21歳&16歳の時。そんな姉妹が、物語のような演奏会を聴かせてくれます。

アーティストとしての互いの関係性や、プログラムの聴きどころをインタビューしました。 

 

文:冨松 智陽

112_p2_02

姉の児玉麻里さん(写真左)と妹の桃さん(写真右)。

海外を拠点に、世界で活躍する姉妹ピアニスト。

互いに高め合える存在

‒ 普段は別々の国で暮らし、それぞれがピアニストとしてご活躍のおふたりにとってお互いはどのような存在ですか?

 

麻里 妹は個性が強く、ひとつのレパートリーを深く掘り下げることができるピアニストです。思いもよらないプロジェクトを企画したり、次世代の指導にも力を入れていたり、いい意味でよく驚かされます。 

 姉は大きな輪郭が見えていてリーダーシップが強く、一緒に弾く時はいつもいい刺激をもらっています。 

麻里 レパートリーも音楽性もずいぶん違いますが、一緒に弾くと以心伝心。今は違う場所に住み、会うこともない中、デュオのコンサートをする時は一緒に旅行をして近況報告をし合っています。

 

‒ 喧嘩はしますか? 

 

麻里 もちろん(笑)!! 

 姉妹なので包み込まずにはっきり物事を言いますが、全部吐き出すので後悔のないリハーサルができ、結果として本番にいい演奏ができるんです。 

麻里 文句を言いながらも、頭を冷やして考えてみると「こういうことか」と思うことが多々あります。桃に言われたことを自分なりに消化すると、とても良い結果が出るんです。 

 それは家族だからこそできること。音楽家は成長し続けるべきなので、率直な意見を言ってくれる存在が身近にいるのはすごくありがたいことです。 

 

‒ では、家族ならではの難しさは? 

 

麻里 姉妹だからこそ完璧さを目指せるので、その点がハードかもしれません。しかしその分、楽しさも倍になります。 

 アーティストとして同じものを追求していく厳しさは確かにありますが、ひとりの音楽家として姉のことを尊敬していますので、一緒に勉強できる時間はとても貴重です。 

 

‒ 海外での生活は、音楽活動にどんな影響をもたらしていますか? 

 

 ヨーロッパには昔の街並みが残っていますので、「ドビュッシーもこんな景色を歩いていたのかな」と、思ったり。雰囲気、空気の匂い、大聖堂を満たすオルガンの響き…あらゆることからインスピレーションを受けています。 

麻里 太陽の光も、落ち葉も、風の音も、ドイツとフランス、日本では全く違うんです。音楽を通じて一つの世界を表現する音楽家にとって、それらを実際に感じることは音楽に対する理解を深めることに繫がると思います。 

 

夢いっぱいの演奏会

‒ 演奏会の聴きどころを教えてください。 

 

 まず、デュオの演奏回数が増えたのはここ10年くらいのこと。それぞれがアーティストとしての経験を蓄えてきた上で、数あるデュオのための素晴らしいレパートリーを弾いてみたいと思ったんです。

麻里 今回のプログラムは、全ておとぎ話を元にした曲で、私たちにとって大事なレパートリーです。

 素晴らしい作曲家たちによる編曲、そしてピアノという楽器の魅力がたっぷりと詰まった夢いっぱいのプログラムになっています。 

 

‒ ピアノだけでオーケストラのような響きをつくるために工夫していることは?

 

麻里 元々どの楽器で弾いているかを理解し、その音に近づけながら、ピアノならではの自由さも表現できるような演奏を目指しています。

 ピアノは、カメレオンのように色んな音を響かせることができる唯一の楽器だと思うんです。

麻里 特に2台のピアノで奏でる豊かな響きを味わっていただきたいですね。 

 

‒ 海外での暮らしが長いおふたりですが、日本で演奏する時の心境は? 

 

 ヨーロッパでも母が日本の文化を大切にしながら育ててくれたので、外国での暮らしが長くてもルーツは日本に感じます。「ただいま」という感覚ですね。 

麻里 iichiko音の泉ホールで演奏できる日が少しずつ近づいてきています。日本に帰るのが今からとても楽しみ。温かな雰囲気をお届けしますので、夢のひとときを楽しんでいただけると嬉しいです。 

 皆さんと一緒に、夢いっぱいのプログラムを共有できることを幸せに思います。お会いできるのを楽しみにしています。

information

日時
2026年2月1日(日)13:30 開場 / 14:00 開演
会場
iichiko 音の泉ホール
料金
S席 4,000円/A席 3,000円/U25割 各席半額
(全席指定)
  • 未就学児入場不可
  • 無料託児あり
お問合せ
iichiko総合文化センター
(公財)大分県芸術文化スポーツ振興財団(097-533-4004)

この記事は「びびNAVI vol.112」で掲載された記事です。
五感の翼が広がる総合ガイド誌「びびNAVI」は、iichiko総合文化センター及び大分県立美術館の館内ほか、県内や隣県の公立文化施設などで配布中。

bivinavi112_mini