iichikoグランシアタで初開催!大分民俗芸能まつり 暮らしに根ざした民俗芸能が舞台上にやってくる!
神社のお祭りで神様に奉納される舞や、踊りなどの「民俗芸能」。
古来から大切に守り継がれてきた県内5つの民俗芸能が、iichikoグランシアタのステージへ!
その見どころを解説します。
文:冨松 智陽
出演団体の見どころ、教えてください!
お話を伺った先生
別府大学
名誉教授(民俗学)
段上 達雄氏
どの地域にも四季折々に催されるお祭りがあり、どこからか笛や太鼓の音が聞こえてくれば自然と心惹かれるもの。民俗芸能と言うと難しく感じますが、お祭りで披露される舞や踊りと言うと、身近に感じられるのではないでしょうか?
民俗芸能は「人々の暮らしに密着している」と教えてくれたのは、長年、民俗学を研究してこられた段上達雄先生。神様に豊作、豊漁などを願い、また感謝を伝える手段として、地域ごとの特色を帯びながら守り継がれてきたのです。
もともと神事だったものが、地域特性を反映しながら芸能の域に高められ、文化財の指定制度ができたことで、価値も一層深まっている今。舞台で鑑賞すると、歌舞伎や能などの伝統芸能にも通ずる“芸術としての面白さ”を感じられます。しかも、今回の「おおいた民俗芸能まつり」は、5つの団体が一度に鑑賞できるまたとない機会。
年の始めに、晴れやかな舞台をお楽しみください。
《豊後大野市》御嶽神楽
物語のある神楽は、演劇感覚で楽しめますか?
はい。特に御嶽神楽は娯楽性も高いんです。
御嶽神楽は、神楽の中でも数少ない国指定重要無形民俗文化財の一つ。昔は神職のみが舞っていましたが、明治時代に神職による神楽が禁止されると民衆に受け継がれ、現在は保存会が継承しています。
全33番の中から今回披露されるのは、『八雲払(やぐもばらい)』の一部。ヤマタノオロチ退治が題材のスペクタクルな演目です。10代の若手から70代のベテランまでが揃う御嶽神楽では、全世代が舞やお囃子の鍛錬を積んでいるのですが、特に若手の舞はエネルギッシュ。伝統を重んじつつもエンターテインメント性が高く見応えがありますよ。
《臼杵市》三輪流臼杵神楽
御嶽神楽との違いは何ですか?
「動」に対して「静」。厳かな舞です。
毎年大晦日、新年を迎えた神前で舞われている神楽。今でも神職が舞う社家神楽の姿を残しており、神様に喜んでもらうことに重きを置いた厳かな舞です。御嶽神楽が「動」なら、三輪流臼杵神楽は「静」。両者の対比を楽しんでください。
演目の『反閇(へんばい)』とは、陰陽師が呪文を唱えながら邪気を払うときの独特の足の踏み方のこと。大地を踏み締める仕草には邪気を封じ込める意味が込められています。
《中津市》宮園楽(かっぱ祭り)
別名「かっぱ楽」と言うのはなぜですか?
かっぱの霊を慰めるお祭りだからです!
かっぱ楽の一種である宮園楽は、面白い伝説を伝える民俗芸能。平家の落人がかっぱに化けて暴れまわり、農作物を荒らしたりするので、霊を鎮め五穀豊穣を祈るために奉納されるようになりました。かっぱに扮した子どもたちをうちわで仰ぎ、鎮めていくシーンが象徴的です。
かっぱ楽は日田市や中津市の各地で受け継がれているのですが、いずれも豊かな川に恵まれた地域ですよね。農業をする上で、水はとても大切。まさに暮らしに根付いた芸能です。
《竹田市》三宅獅子
神楽のように、獅子舞にも違いがありますか?
ありますね。三宅獅子は御嶽流の獅子舞です。
獅子舞は、獅子の数や舞の雰囲気に違いがありますが、大分に伝わっているものは2種類に大別されます。そのうちの一つである御嶽流は、現在の竹田市を中心に広まっていった流派。その流れを脈々と受け継いでいるのが三宅獅子です。
雄雌2頭の獅子が舞う三宅獅子は、テンポの良さが見どころです。お祭りでは邪気を払う役割。例えば鳥居の下をくぐっても安全か確認する所作があるのですが、それが舞台上ではどう見えるか、注目したいですね。
《佐伯市》臼坪杖踊り
「杖踊り」って、そもそもどんな芸能ですか?
もともとは「武術」だったんですよ。
武術の「棒術」から発展した芸で、これもれっきとした神事。佐伯市にある五所明神社(ごしょみょうじんじゃ)の春祭りで奉納されています。神幸行列では神様を乗せたお神輿ともに歩き、棒で邪気を祓い清める役割を担っています。
青年が白杖を、子どもが色杖を持って踊りが披露されます。起源が武術とあって特に青年の芸は勢いがあり、杖を振ると“ブンッ”という音も聞こえますよ。人材育成にも熱心に取り組み、地域で大切に守り継がれています。
information
(全席指定)
(公財)大分県芸術文化スポーツ振興財団(097-533-4004)
事前講座開催!
●午前の部 10:00 開場 / 10:30 開演 【会場】会場:iichiko SpaceBe リハーサル室(地下1階)
●午後の部 14:30 開場 / 15:00 開演 【会場】エイトピアおおの 会議室
この記事は「びびNAVI vol.112」で掲載された記事です。
五感の翼が広がる総合ガイド誌「びびNAVI」は、iichiko総合文化センター及び大分県立美術館の館内ほか、県内や隣県の公立文化施設などで配布中。