受け継いだ“額縁”に、新しい音楽を描く。 挾間美帆×デンマークラジオ・ビッグバンド
国立音楽大学、マンハッタン音楽院大学院卒業。ジャズ作曲家・指揮者として国内外で活動し、山下洋輔、坂本龍一、NHK交響楽団などへ作品を提供。2019年、「世界が尊敬する日本人100」に選出され、同年よりデンマークラジオ・ビッグバンド(DRBB)首席指揮者を務める。2020年、2025年にはグラミー賞にノミネートされるなど、国際的に高い評価を得ている。
1964年創設。北欧ジャズシーンを代表するデンマークラジオ・ビッグバンド(DRBB)は、サド・ジョーンズ、ボブ・ブルックマイヤーら歴代の名音楽家とともに歩み、マイルス・デイヴィスをはじめ世界的アーティストとの共演でも知られる。2019年からは挾間美帆を首席指揮者に迎え、アメリカン・ビッグバンドの伝統に北欧ならではの感性を重ねた音楽を届けている。
世界を舞台に活躍するジャズ作曲家・指揮者、挾間美帆。
60年以上の歴史を持つデンマークラジオ・ビッグバンド(DRBB)の首席指揮者として、伝統と向き合いながら、新たな音楽を追求している。
4年ぶりの日本ツアーを前に、DRBBとの歩みや新作『Frames』、そして初めて訪れる大分について話を聞いた。
収録曲:「And the Door Unsealed」「Rondo」「LuLu」ほか全6曲。
初めて訪れる大分 音楽家として感じる歴史と名字に感じる不思議な縁
ー 今回の日本ツアーで初めて大分を訪れることになります。大分という土地で演奏することについて、どのような思いを抱いていますか。
デンマークラジオ・ビッグバンド(DRBB)だけでなく私自身にとっても、大分で公演させていただくのは初めてですので、非常に興奮しています。日本人で初めて世界JAZZの殿堂入りを果たした穐吉敏子(あきよし としこ)さんがキャリアをスタートさせた地でもありますから、耳のこえた音楽ファンの皆様に良い音をお届けできるよう、緊張感を持って演奏したいと思っています。
そして、個人的な話になってしまい恐縮ですが、私の名字は旧字で「挾間」と書くのですが、大分県にだけまだこの漢字の地名が残っているそうですね。難しい漢字で肩身の狭い思いをしてきたのですが、この地名が存在していることに個人的にはずっと親近感を抱いていたので、念願叶って大分に伺うことができてとても嬉しいです。
ー 2017年の東京JAZZでの共演が、その後のDRBBとの歩みにつながったそうですね。
出会いのきっかけとなった2017年の東京JAZZでは、フェスティバルのプロデューサーが急病で倒れ、プロデュースできなくなってしまった大きなプロジェクトを、DRBBのプロデューサーやバンドのメンバーたち、そして私が力を合わせて実現しました。非常に大きな達成感を得た初共演でした。
これをきっかけに、彼らの本拠地であるコペンハーゲンにも呼んでもらえるようになりました。まさか日本人女性である私が首席指揮者に任命されるとは夢にも思っていなかったので、オファーを受けた時は「誰かほかの人のことではないか」と思ったほどでした。
デンマークは非常に人種差別の少ない国で、一度心を開いてもらえると、とても温かい愛情を注いでくれる国民性です。ですから、日本人として何かをやっている、という感覚はなく、彼らからの愛情も感じますし私も彼らを敬愛しています。私の才能を信じて任命してくれたと信じ、それに恩返しできるような作品やプロジェクトへ導く努力を続けています。
分解し、学び、自分の音楽の一部に。新作『Frames』に込めた思い
ー 新作アルバム『Frames』は、サド・ジョーンズをはじめとするDRBBの歴代首席指揮者たちへの敬意が込められた作品だと伺いました。この作品に込めた思いと、制作にあたって大切にされたことについてお聞かせください。
DRBBには過去7人の首席指揮者がいました。彼らを額縁(フレーム)に見立て、その中に自由に自分の音楽を描いていく、というコンセプトから『Frames』というタイトルになりました。過去の首席指揮者たちの取り組んだ音楽や作曲作品を単にコピー&ペーストするのではなく、分解し、勉強したあとで、細かい要素を自分の音楽ボキャブラリーの一部とする工夫を重ねました。
ー 今回の公演では、『Frames』の新曲に加え、DRBBが受け継いできた名曲の数々も演奏予定と伺っています。注目してほしいポイントを教えてください。
DRBBは1964年創立以来60年以上にわたり、ビッグバンド編成での音楽を演奏してきましたので数々の名作が存在します。なかでも、カウント・ベイシー・オーケストラでの演奏活動をはじめ、作曲家・編曲家としても大きな功績を残したサド・ジョーンズは、のちにデンマークへ移住し、多くの作品を残してくれました。彼のとびっきり明るい音楽もぜひお楽しみください。
私の前任の首席指揮者であり作曲家のジム・マクニーリーは、私にとって作曲の恩師でもあるのですが、非常にウィットに富んだ先生で、超有名な曲も挑戦状をつきつけるように編曲してしまいます。ユーモアあふれる有名曲のアレンジにもご注目ください!
ー 最後に、大分公演を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
バンドのメンバーたちも今か今かとツアーを楽しみにしています。特に、前回日本ツアーに来た際はまだコロナ禍の規制の厳しかった時期で、お客様と直接的に関わることがあまり許されませんでした。コンサート中もマスク着用の規制がありましたので、お客様の表情を見ることができませんでした。それだけに、彼らは「お客様が喜んでくださる顔をみたい、そのために心を込めて演奏したい」と張りきっております。手前味噌ではございますが、非常に洗練され、透明感と明るさと、大所帯ならではの分厚い音を演出できるこのようなビッグバンドは、私自身世界の色々な場所で演奏してきましたがDRBBの他にあまり類を見ません。
この機会にぜひ、DRBBに会いに来てください!
information
U25割/各席半額
- 未就学児のご入場はご遠慮ください。
この記事は「びびNAVI vol.117」で掲載された記事です。
五感の翼が広がる総合ガイド誌「びびNAVI」は、iichiko総合文化センター及び大分県立美術館の館内ほか、県内や隣県の公立文化施設などで配布中。