伝統と革新、明と暗_ レイヤーを聴いていただける演奏会にしたい 九州交響楽団 大分特別演奏会
千葉県出身。小・中・高校を通じてクラリネットを吹いていたが、高校時代に所属していたオーケストラで指揮を経験したことから、指揮者を志した。東京藝術大学とベルリン芸術大学で指揮を専攻。ライン・ドイツ・オペラ劇場を経て、2013年からドルトムント市立劇場の第一指揮者、音楽総監督代理として重責を担う。
ドイツの歌劇場を拠点に活躍する指揮者・小林資典氏が、九州交響楽団と初共演。
福岡公演に先駆け、大分で実現する特別演奏会を前に、マエストロにお話を伺いました。
文:冨松 智陽
ー 初共演となる九州交響楽団(以下、九響)、そして北村朋幹さんの印象をお聞かせください。
九響さんの演奏には、気候が良い土地柄でしょうか、音も雰囲気もとても明るい印象を受けています。また、僕は98年からドイツを拠点としていますが、こちらのオーケストラはどこも地元愛が強いんです。九響さんも同じく地域に根ざした活動をしていらっしゃるので、とても親近感があり、共演をお声がけいただいたときには「ぜひ!」と即答しました。 北村さんのご活躍も以前から存じ上げていて、とても集中力の高い、研ぎ澄まされた演奏をする方だというイメージです。同じドイツにいながら面識はないのですが、彼が「ベルリンでは毎日コンサートに行ける」とインタビューに答えている記事を読んで、僕がドイツを選んだ理由と同じだと思ったことがあるんです。共通点が多そうなので、お会いできるのを楽しみにしているところです。
ー 初共演のときにはどんなことを大切にされていますか?
オケの皆さんとソリストの方、そして僕、それぞれが曲に対するビジョンや考え方を持っています。それを突き合わせながら一つの音楽を創り上げていくプロセスにおいて、指揮者として自分の信条をただ表明するよりも、相手の信条にもリスペクトし、良いバランスを探っていきたい。そのためにオープンマインドであることをとても大切にしています。
音楽は、自由でいい
ー モーツァルトの『プラハ』は自ら選曲されたそうですね。
はい。九響さんからご提案いただいた候補の中から、演奏会の幕開けにふさわしいバランスの取れた曲だと思いセレクトしました。2曲目には、北村さんがピアノ協奏曲の中から24番を選ばれたと聞いて、すごく嬉しかったです。この曲は、ソリストにもオーケストラにも華がある“協奏交響曲”的な趣があり、間違いなく異色なコンツェルト。北村さんのイメージに合うと思いました。それから、これは個人的な話になるのですが、数年おきにピアノコンクールのオーケストラ伴奏をする機会があり、24番が課題曲の一つになる度に万全の準備をしてきました。ですが、なかなか本選で弾く人がいないんです! いい曲なので僕はやりたいのに(笑)。そういう意味でも今回演奏できることを楽しみにしています。
ー モーツァルトとプーランクを組み合わせた珍しいプログラム。どうまとめたいとお考えですか?
モーツァルトとプーランクはよく似ていると言われます。天真爛漫でいたずらっ子なところや、早熟で天才だったこととか。一方で生きた時代やバックグラウンドが異なるので、今回のプログラムでは、共通点も違いもどちらも聴いていただけると思います。彼らの作品は、伝統を重んじながらも革新的。新しいことにチャレンジしていく気持ちが強く感じられます。ふたりとも今いる場所に落ち着くより、「もっとこんな響きも!」「もっと!もっと!!」と自分にもお客様に対しても聴かせたい思いがあったと思うんです。びっくりさせてやろうと言わんばかりに。僕は、そんな彼らのエッジを強調したい。明るく楽しいだけでなく、ときに退廃的な一面も見せてくれる彼らの、レイヤーを聴いていただける演奏会になればと考えています。
ー 何度も演奏してこられた〝モーツァルト〟の魅力とは?
若い頃は、怖い作曲家でした。モーツァルトの曲は難しいので、1小節演奏しただけで自分のテクニックから音楽性まで全てバレてしまうんです。誤魔化しがきかないのにオーディションでは避けて通れなかったので、怖かったんですよね。ですが繰り返し付き合っていくと、重ねた年齢や経験を通じて、5年、10年前に演奏した楽譜の感じ方が変わっていきました。それが成長というものであれば嬉しいですが、自分の立ち位置を感じさせてくれるありがたみのある作曲家であり、どんなふうに感じても引き出しを開けてくれる懐の深さもあります。まるで、古い友達でいてくれるような感覚です。
ー 高校時代にオーケストラを経験されていますが、それは音楽家としての人生に何か影響を与えていますか?
影響はすごくあると思います。オーケストラは社会の縮図のようなもの。100人くらいの程よい規模の中に、いろいろな個性の人がいて、良いところも悪いところもお互い許し合ったり、互いの信条を譲り合ったりしながら演奏を創り上げています。全員でそれをやっていることが美しいことだと感じますし、今でもオーケストラは、人間というものを学ぶ良い機会になっていると思います。
ー 最後に、演奏を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。
演奏会は、演奏者と聴衆の皆さんで一緒につくる場です。音楽家同士の化学反応はもちろん聴かせどころだと思いますが、お客様が会場にいてくださらなければ形にならないので、ご来場くださることにまずは感謝。その上で、自由奔放に作曲したふたりの音楽家をご紹介できるのが楽しみです。音楽は、自由でいい。皆さんの普段の生活から持ち込む感覚をもって、自由に聴いていただきたいと思います。
PROGRAM
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モーツァルト/ 交響曲 第38番「プラハ」 ピアノ協奏曲 第24番
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プーランク/ 組曲『牝鹿』
TOPICS
九州交響楽団と包括連携協定を締結 大分特別演奏会・事前レクチャーも開催!
大分県芸術文化スポーツ振興財団(理事長/広瀬 勝貞)と九州交響楽団(理事長/五島 久)はこのたび包括連携協定を結び、4月30日に締結式が行われました。九響は70年以上の歴史を持つ九州唯一のプロのフルオーケストラで、大分ではこれまでに50回以上の公演が開催されています。連携により今後さらに多くの公演が期待されるほか、音楽の普及啓発や人材育成、ホール外へのアウトリーチなども行われる予定です。締結式で五島理事長は、「大分の方々からも私たちのまちのオーケストラだと言ってもらえるオケになりたい」と思いを込められました。
7月22日の大分特別演奏会は、協定締結後、記念すべき最初のコンサート。これに先駆けて4月12日には、関連事業として事前レクチャーも開催されました。
information
指揮者プレトーク 開演30分前から約10分間プレトークをお楽しみください
- 全席指定
- 未就学児のご入場はご遠慮ください。
この記事は「びびNAVI vol.116」で掲載された記事です。
五感の翼が広がる総合ガイド誌「びびNAVI」は、iichiko総合文化センター及び大分県立美術館の館内ほか、県内や隣県の公立文化施設などで配布中。